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医療・介護改革 利用者の視点を忘れるな

団塊世代が75歳以上となる「2025年問題」に対応するため、厚生労働省が医療と介護保険の見直しを進めている。来年度は診療報酬と介護報酬が同時改定となる。

 住み慣れた自宅などで最期まで暮らせるよう、地域包括ケアシステムを推進することに大きな眼目がある。これを後押しするため、医療と介護の役割分担と連携強化が今回の焦点である。切れ目のないサービスの確立には一体的な議論が重要である。加藤勝信厚労相の調整力に期待したい。

 最大の課題は、介護費用の伸びをどうするかだ。在宅サービスを推進して医療費を削減できたとしても、それ以上に介護費用が膨らんだのでは元も子もない。

 社会保障費全体の抑制が避けられない中で、安心して介護サービスの利用を続けるには、より効率的な仕組みがいる。

介護現場には「制度の欠陥」というべき無駄が残っている

 リハビリによって機能が回復しても、要介護度を下げない事例が後を絶たない。要介護度が重いほど、給付が手厚いためである。

 政府は、利用者の介護状態を改善させた事業者に対する報酬を高くする方針だ。どのような支援が自立に結び付いているか、科学的分析も行うという。

さらに、高齢者の要介護度の改善や維持といった成果に応じて、自治体に財源を配分する仕組みも導入する。多くの職種が連携することで、介護にかかる費用の抑制に成功した好事例を、全国に普及させようというわけだ。本当に必要とする人にサービスを行き渡らせる上で、こうした無駄を無くすべきなのは言うまでもない。

 一方で、利用者には「状態の改善の見込めない重度者が敬遠される」という不安の声もある。要介護度の重い人を医療機関に回し、成果が上がったように見せかける自治体が出てくる懸念も指摘されている。過度な成果主義に走ることのないよう、厚労省には「抜け穴」に目を光らせる仕組みを同時につくることを求めたい。

 自己負担割合の引き上げなど負担も増え続けている。国民の理解を得るには、制度の維持性を高めるだけでなく、「利用者本位」の視点を忘れてはなるまい。

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