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「患者協働」の医療実現を

病気の治療は、方法やスケジュールなどの方針を医師が提案し、患者がそれに同意する-という流れが一般的。それに対し、患者も積極的に自分の希望を伝えて、医療チームの一員として方針を決めることに関わる「患者協働」という新しい考え方がある。

現在の「患者中心」の医療とはどう違うのか、協働へと変えるにはどうすればいいのか。十月に東京都内で開かれたイベント「いまこそ、患者協働の医療の実現を!」では、患者と医療者が意見を述べ合った。

 「日本の医療を考えるとき『患者中心』という言葉をよく聞くが、私は少し違和感を覚えている」。イベントの冒頭、主催した「患医ねっと」(東京)代表の鈴木信行さん(48)は、こう問題提起した。

 生まれつき障害のある鈴木さんは現在も難治性のがんを患っている。長年、医療の恩恵を受けてきたが、医師側に自分の意思を伝える難しさも感じてきた。例えば、仕事のスケジュールとの調整を望んでいても、医師との間に心の壁があって伝えることはなかなかできない。その理由が「患者中心」の医療にあると気付いたという。

 これまで患者は「中心」に置かれていても、いざ治療方針を決める段階になると、「同意」という形はとっても、医師の提案を受け入れることが基本だった。

 それに対し、患者自身が「自分はどう生きたいか」を軸に、医師らと共に疾患に向き合う姿勢が大切だと気付いた。そのためには「患者ももっとやれることがあるし、医療者にももっと、やるべきことがあるだろう」と問い掛けた。

 ともに主催した株式会社「ペイシェントフッド」(同)代表の宿野部(しゅくのべ)武志さん(49)は三歳で慢性腎炎になり、十八歳から人工透析を続ける。一回五時間の人工透析は週三回。患者の中には、「医師との関係がこじれると通院しにくい」と、薬の変更といった希望を伝えられない人も多いという。だが「治療や薬の選択は命の選択。一番大切な命を他人に任せることになる」と疑問視していた。

 宿野部さんは患者の思いを社会や医療に生かそうと、医療機関でのコンサルティングなどを行う会社を起業した。腎臓病患者らのためのウェブサイト「じんラボ」も運営。これからは「患者も(健康に関する情報を得て、意思決定に生かすための)ヘルスリテラシーを上げることが重要」と指摘した。

 患者協働の動きはまだ緒についたばかり。患者側も「まずは患者が医師にきちんと意思を伝えることが大切」とする。ただ医師ら医療者側からも「協働」を支持する声が出ている。

 慶応大看護医療学部教授の加藤真三さん(61)は、公開講座「患者学」を開き、市民と医療者の対話を進めている。「急性疾患の治療は医師が決めても、慢性疾患の場合は『同意』ではなく『合意』が大切。医師と患者が対等な関係で考えること」と話した。

 腎臓内科医でコンサルティング会社「オフィス・ミヤジン」(千葉県浦安市)取締役の宮本研さん(42)は、医師の知識と経験知の多さに言及。患者協働を進めるべきだとした上で、「医師には積み上げてきたものが多くある。患者さんはぜひ『どう考えますか』と医師に聞いてほしい」と呼び掛けた。(竹上順子)

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