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89歳の母介護の男性「受け止めるのに3年、開き直るのに5年」認知症への理解を 世界アルツハイマーデー

認知症への理解を深めようと、「国際アルツハイマー病協会」(本部・英国)が平成6(1994)年に制定した「世界アルツハイマーデー」の21日、国内では30カ所が認知症のシンボルカラーであるオレンジ色にライトアップされる。

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 日本では、公益社団法人「認知症の人と家族の会」(同・京都市)が中心となって25年からライトアップを行っており、今年はポートタワー(神戸市)や京都タワー、大阪城などがオレンジ色に灯される。

 厚生労働省によると、高齢化の進展に伴い、24年に462万人だった認知症患者は37年には約700万人に増加すると推計されるという。家族の会の鈴木森夫代表理事(65)は「認知症は初期から重度まで幅広く本人の状態もさまざま。まずは認知症のことを知ってもらい、支援の輪を広げたい」と話している。

 大阪府豊能町の木寺喜義(きてらきよし)さん(63)は、認知症の症状が出始めて12年になる母のコハルさん(89)を自宅で1人で介護している。

 お盆に供える花束を花筒に差し込むことができない、畑に行く軽トラックへの乗り方を忘れた…。コハルさんに認知症の症状が出始めたのは平成17年だったという。

そのうち、靴下を手にはめるなど着替えができなくなり、外出先から戻れなくもなった。生まれ育った自宅なのに「もう家に帰ります」と言い張り、夜中に暴れることも。「こんな日が続くのならば殺した方がましだ」。木寺さんはコハルさんの首を絞めようとしたこともあったと振り返る。

 19年の夏からは、下の世話も必要になった。ただこのころ「認知症の人と家族の会」の存在を知り、大阪支部に入会したことで転機が訪れた。

 「自分が世界で一番苦労している」と思い、話を聞いてもらおうと入会したが、会には長年在宅介護をしながら、にこにこと人の介護相談に乗っている人がいて、目が覚めたという。

 その後、木寺さんは訪問看護などを利用しながら在宅介護を続け、現在は、家族の会大阪府支部代表と同会の電話相談員などを務める。「受け止めるのに3年、開き直るのに5年。介護は長期戦です」と語る。

 コハルさんは立ったり歩いたりはできず、今年夏にはショートステイで顔に原因不明の傷を負うなど危機もあったが、無事に回復した。「100歳まで生きてほしい」。それが今の木寺さんの目標だという。(加納裕子)

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